ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

グレイの色指定。

tinpan19732006-07-23

「When I Met The Grey Sky」、
大貫妙子1976年のデビュー・アルバム
『Grey Skies』に収録されている。


大貫さんを四谷ディスク・チャートに連れて行った人
(ここでの出会いがシュガー・ベイブへつながる)
といわれる矢野誠氏による編曲。


後のヨーロッパ路線の先駆けとも思える曲だが、
琴(だと思う)のような和楽器の音も聴こえ、
“エキゾティック・ジャパン”を感じる。


この76年は(30周年だ)、
細野晴臣泰安洋行』、あがた森魚『日本少年』、矢野顕子『Japanese Girl』
とポップ・ミュージックの中で日本らしさが正しく主張を始めた年
として記憶される。


アレンジャー矢野誠氏は、その立役者なのかも知れない。
この年、ナイアガラ・トライアングルや大貫さんのデビュー作で、
プレイヤーとしてアレンジャーとして活躍した坂本龍一氏もそうだが、
アカデミズムの世界に居た人たちが、
ティン・パン系周辺で存在をアピールしだして、
音楽に質と奥行きを与えたのは紛れもない事実だと思う。


それにしても、大貫さんのこのデビュー作、編曲者として
矢野氏、坂本氏の他にも、細野氏、山下達郎氏がラインアップされている。
パナム時代のシングル「明日から、ドラマ」はたしか松任谷正隆氏アレンジ。
これほど多くのアレンジャーと組みつつも、
音楽にトータリティが感じられるのは、
アーティストとしてのアイデンディティがしっかりしているからか。


大貫さんの音楽に共通する色が「グレイ」だとしたら、
どのアレンジャーもその色指定を誤っていない気がする。
今日の東京の空のような重い灰色でなく、
微かに太陽の光も差し込む曇り空。


雨に、曇りに…。空を見上げて、
荒井由実さん、吉田美奈子さん、大貫妙子さんの
デビュー作の話を綴って来たので、明日は矢野顕子さんにしよう。
「電話線」も空を見上げて聴く歌だと思うから。


空を見ながら、この4人について書くことは、私にとって
季節を進める“てるてる坊主”。早く梅雨が明けてほしい。