あの桜の道もティン・パン・アレー。
桜が満開になったようだ。
先日スタートしたシリーズ
〔ティン・パン・アレーを訪ねて〕第2回は、
桜の名所を取り上げてみよう。
ティン・パン的桜の名所というと、
千鳥ヶ淵だろうか。やはり。
松任谷由実さん1983年のアルバム『REINCARNATION』の
最後の曲「経る時」は、皇居のお堀近く千鳥ヶ淵の
フェアーモント・ホテルのカフェが舞台と云われている。
戦後すぐに建てられGHQ高官や外交官が出入りしたホテル。
私は80年代の後半に一度訪れお茶を飲んだことがあるだけだが、
アンティークでなかなか趣きのある建物だった。
♪窓際では老夫婦が 膨らみ出した蕾を眺めてる
桜の季節に一度、それこそ「経る時」の詩にあるように
カフェに入ろうとしたが、混雑ぶりが半端じゃなく、あきらめた。
♪空から降る時が見える 寂れたこのホテルから
味わい深いフェアーモント・ホテルだったが、
2002年1月27日をもって閉館。
昨年の3月ごろ近くに行く機会があり跡地を見てみたところ、
マンションが建っていた。
♪四月ごとに同じ席は 薄紅の砂時計の底になる
ホテルのカフェの窓際の席=薄紅の砂時計の底。
桜の花びら=空から降る時。
そして、タイトルは「経る時」。スバラシイ!
私たち日本人は、4月、桜の咲く季節から、新入学や新学期など
新しい生活をスタートすることが多い。旅立ち、別れ、出会い…、
時の流れや変化を実感するのは、圧倒的にこの時期だと思う。
「人生の主役は、時間である」、故・久世光彦氏の御言葉。
移ろい行く時間の、儚さ・切なさをどう描くかは、
物語の永遠のテーマだ。
その、ひとつの答えが、この楽曲。
桜の季節に、毎年一度は聴いている。
いつか見た千鳥ヶ淵沿いのあの道の桜並木を思いながら…。