ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

謎の“クリスタル”トライアングル(吉田〜長門〜田中)。

tinpan19732006-03-31

2/4Pied Piper Daysのとき、
長門芳郎氏にお聞きしたかったことがある。
用事があり20時半に泣く泣く中座したため、
質問できなかった。


田中康夫・現長野県知事は1980年『なんとなく、クリスタル』で
作家デビューなさった。作品に関しては賛否両論があると思うが、
あの時代の都市風俗の一面を鮮やかに切り取った
という点は事実だと思う。


この小説は、当時流行しつつあったAOR系の洒落た音楽のカタログ
としての機能もあった。六本木某ディスコでのバイト経験もある
田中氏は、当時青山にあったレコードのセレクト・ショップ
Pied Piper House”の常連客で、店長の長門氏は田中氏の
音楽面での良きアドバイザーであられたそうである。


先端の音楽情報とともに、長門氏は大切なことを田中氏に伝えた
と思われる。


山下達郎氏の1979年のアルバム『MOONGLOW』に、
吉田美奈子作詩・山下達郎作曲「Rainy Walk」という楽曲が
収録されている。80年の大ヒット・シングル「Ride on Time」の
B面でもあり、高橋幸宏氏ドラム、細野晴臣氏ベースという、
達郎氏にとっては異色のリズム・セクション。とはいえ、
そこは腕利きのお二方、きちんとシカゴ・ソウル・マナーの
演奏をされていると、再発盤のライナーに書かれていた(はず)。


この楽曲に次のようなフレーズがある。
♪立ち止まると時は そのまま クリスタル!
 何もかも動かず 静まりかえる
たしか詩に「!」マークも付いていた。それくらい楽曲の中で
象徴的に「クリスタル」という言葉が使われていた。


この「Rainy Walk」で使われている「クリスタル」に込められた
ニュアンスやエッセンスが、 長門氏経由で田中氏に伝わり
「なんとなく、クリスタル」のタイトルになった!
というようなことを、その昔何かで読んだ覚えがある。
今となってはもう出典もわからない。
が、私はこれ、かなりの確率で真実だと思う。
時代の先端の空気や気分を音楽にした
ティン・パン系アーティストたち。
彼・彼女たちのクリエイティブは実は音楽だけでなく、
小説など他の表現行為に、いや当時の文化そのものに
多大な影響を与えた(私など人生が影響された!) 。


次回Pied Piper Daysで、ぜひ長門氏にお聞きしたいものだ。