ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

モノの作り方、線の引き方。

tinpan19732006-03-18

まるでイジメに遭っているようだ。
今仕事である印刷物を作りかけているのだが、その得意先の担当者から、これでもかと修正の指示が入ってくる。もう10回はやりとりしただろうか。これでだいじょうぶと思うと、新たな修正が入り、以前に訂正したところが復活したりするから始末に終えない。今日土曜日も、実は先ほど原稿のチェックを終えたばかり。
どこかで線を引かないと、イヤ、ゴールに対する明確なイメージがないと、永遠に作りつづけることになる。


山下達郎氏『POCKET MUSIC』は、レコーディング・ツールがアナログからデジタルに変わったこともあり、膨大な制作時間を要したアルバムだそうだ。
達郎氏の求める音像を得ることができず、試行錯誤したらしい。
(こちらはゴール・イメージがあるのに、
 技術やテクノロジーがそれに追いつかないという例ですね。私とは全く逆)
多くを吉田保氏がミックスされていたCBSソニー六本木スタジオの、いわゆるアナログ・レコーディングの頂点といえる、82年『FOR YOU』等で顕著なエコーの効いたサウンド、あの音を出すのはやはり難しいと思う。たしか、この『POCKET MUSIC』の時は、PC98あたりで打ち込んでいたのでは…?
「THE WAR SONG」は音を重ねてみたものの、塊になっただけで奥行きはでなかった。89年『JOY』収録のLiveヴァージョンのほうが良かったりする。というような達郎氏の発言を聞いたことがある。
求める音像が得られない。だから、楽曲自体も、穏やかな小品とでも言うような、この時代のデジタル・レコーディングの音に相応しい曲調が多くなっているのだと思う。
といいつつも、「風の回廊」。HONDAインテグラのCMソングで長くオン・エアされたが、この音には奥行きを感じる。但し、その奥行きに貢献しているのは、楽器ではなく声。達郎氏ご本人の多重コーラスだと思う。


『POCKET MUSIC』は1986年の連休ごろ発売されたはずだから、祝20周年だ。発売日が近づいたら改めて取り上げてみたい。