ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

勢いで語れ、『泰安洋行』。

tinpan19732006-03-11

やっと、このアルバムについて語れる。
このWeblogを始めたときから、いつか書こうと思っていたけれどムズカシかった。“30周年”にかこつけて、勢いで書いてしまおう。


細野晴臣氏『泰安洋行』、76年7月25日発売。エキゾティック三部作ともトロピカル三部作とも呼ばれる作品の2作目。
どうも我々は、アーティストの作品を「三部作」として語るのが好きらしい(大貫さんや加藤さんのヨーロッパ三部作だったり。ユーミンの純愛三部作だったり…)。しかも視点は、必ず過去を振り返って「三部作」と分類する。アーティスト自身、未来に向かって「これから三部作を作ろう!」とは思わないはず。
その三部作中の『トロピカル・ダンディ』『はらいそ』については、すでに書いた気がする。『泰安洋行』について何故書きづらいかというと、他の二枚ほどアルバムを聴いていないからだと思う。『トロピカル・ダンディ』の音やリズムの“アソビごころ”が、『泰安洋行』では洗練されてしまったように思えて…。『はらいそ』の「四面道歌」「ウォーリー・ビーンズ」「はらいそ」のようなヴォーカル・ミュージックとしてメロディアスな楽曲が『泰安洋行』には見い出せなくて…。ちょっと距離のあるアルバムなのだ。


萩原健太氏や篠原章氏、北中正和氏ら評論家の方々には、評価の高いアルバムである。「日本のロック」「日本のポップ・ミュージック」を海外の人に紹介するとき、このアルバムを紹介するというのも理解できる。篠原氏が「Chow Chow Dog」について『REMEMBER』第15号などで書かれているように、「食用黒犬〜中国〜涅槃〜般若心経〜ゴスペル」を結びつけて“チャンキー・ゴスペル”として作品にしてしまう引用力、その発想・クリエイティビティは細野氏ならではだと思う。また、山下達郎氏はこのアルバムの音を評価されている(『THE ENDLESS TALKING』筑摩書房)。


2/4トーク・イベント「Pied Piper Days」に向かう電車の中で久々にこのアルバムを聴いてみた。アルバム前半「蝶々-San」「香港ブルース」あたり音としては楽しめるのだが、ヴォーカル・ミュージックとして親しみづらい。これが、このアルバムに距離を感じていた最大の理由だと再認識した。でも、後半になると「ブラック・ピーナッツ」「Chow Chow Dog」でサスガだと思い、「ポンポン蒸気」では2000年Tin Panライヴを思い出し、「エキゾティカ・ララバイ」のメロディアスさを再評価した。先日作ったオムニバスMDにも入れて、良く聴いている。


いやぁ、やっぱりムズカシイ。このアルバムについて語るのは…。マジメに語れるほどの知識も素養も耳もないのにそうなりつつあるので、ちゃんと脇道(SIDEWAYS)に逸れて終わらなければ…。


以前のYahoo!アドレス時代、このアルバム・タイトルと同名のペンネームの方に、よくコメントをいただいた。早朝の、私がカンペキ寝ている時間に。朝、会社でPCを立ち上げWeblogをのぞくと書き込みをいただいていることが多くて…、うれしかった。100文字程度のさりげない言葉のキャッチボールが楽しかった。ティン・パン系も、サディスティックス系もお好きで、たぶんギターを弾かれる方だと思う。泰安洋行さん、ありがとう!