ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

雨のグラデーション。

tinpan19732006-02-26

今日は雨。季節がちょっと逆戻りしたような冷たい雨が降っている。
世の中には雨の歌が多い。しかも名曲が多い。人間の微妙で繊細な心象を託すに相応しい気象なのだと思う。
たとえば、これまでに当Weblogで取り上げてきた山下達郎氏の自作詩「2000トンの雨」「スプリンクラー」や松本隆氏「12月の雨の日」。いずれも喪失感や疎外感を表現した名作。季節やその時々の気分に応じて、私はこのような雨の歌を楽しんでいる。


今日の雨で聴きたくなったのは「赤いスイートピー」。松本隆・作詩、呉田軽穂・作曲。呉田軽穂は、松任谷由実さんのペン・ネーム。ユーミンも、ユーミンのお母さんも大好きだった女優グレタ・ガルボからネーミングしたそうだ。
この曲を歌った松田聖子さんを、シンガーとしてあまり、アーティストとして全く好きになれないため、長らくこの曲をCD音源で持っていなかったのだが、90年代の終わりに松本隆氏の代表曲をコンパイルした『風街図鑑』が出たため、聴けるようになった。
♪四月の雨に打たれて駅のベンチでふたり 他に人影も無くて〜
北鎌倉の駅を舞台にしたと云われている。四月だから今の季節だとちょっと早い気がするが、今日の雨のシトシト降る感じが歌の風景にマッチしているように思う。
この曲、ドラムは林立夫氏だそうだ。昨年末に出た林氏の演奏曲集『NON VINTAGE』にも収録されている。82年の作品で、アレンジは松任谷正隆氏だから、B高水健司氏、G鈴木茂氏or松原正樹氏or今剛氏といった、この時期のユーミンのアルバムのバックUPミュージシャンがこの曲でも演奏しているはずだ(そういう音をしている)。


冬から春へ、ひと雨ごとに季節は進む。今日の雨と、「赤いスイートピー」の四月の雨が異なるように、時期によって場所によって気分によって、ひと雨ひと雨ぜんぶ降り方が違う。この雨のグラデーションを、作品として楽しめないかな…と、思う。
10曲入りとして、冬から春を10の詩にするのが困難ならば、春夏秋冬を10の雨の詩にするのでもいい。旧作、新作、織り交ぜてでもいい…。
松本隆さん、山下達郎さん、吉田美奈子さん、松任谷由実さん、あたりにぜひお願いしたいものだ。