ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

“時間”を描く天才たち。

tinpan19732006-06-03

5月から6月の曇った日に観た映画は、
私にとって名作となることが多いようだ。


先日取り上げた『グッドナイト&グッドラック』、
昨日の『ロスト・イン・トランスレーション』、
皆この時期のそんな天気の日に観た作品だ。
そういえば、2年前の『めぐりあう時間たち』も…。


英国、米西海岸、米東海岸、3エリアで暮らす3人の女性が描かれる。
英国は作家ヴァージニア・ウルフという設定だったりする。
それぞれ時代は微妙に違うのだが、三者三様の時間がやがて複雑に絡まって…。


2年前のアカデミー賞作品賞にノミネートされ、
私にとってはダントツの作品賞だった。
(ちなみに昨年なら、やはりノミネートどまりだった
 『サイドウェイ』が私にとっての作品賞である)


映画も、それから音楽も、“時間”をデザインする芸術である。
観衆や聴衆に、極上の時間をプレゼントしてくれる行為である。


音楽では、たとえば詩の分野に特化しても、
巧みに“時間”を描くアーティストがいる。


吉田美奈子さん1996年『KEY』最後を飾るバラード
「12月のイルミネーション」の冒頭にこんなフレーズがある。


♪静かな呼吸でこの世界を見つめている
 時間が移り変わる瞬間の狭間でも
「時間」「瞬間」「狭間」…、このワン・フレーズだけでも、
3つの時を細やかに描き分けてしまっている。
美奈子さんには、他にも「時よ」(山下達郎氏のカヴァーでもお馴染み)、
「時間を見つめて」という名作がある。


山下達郎さんの雨の歌には名曲が多い。
大貫妙子さんの旅の歌には名曲が多い。
と、これまで書いたことがある。
吉田美奈子さんの時の歌には名曲が多い。
という文にもこんどトライしてみよう。


時間を細かく刻んで料理する術を、
吉田美奈子さんを例に記したが、
「過去」「現在」「未来」の時間軸を
独自の視点で見つめて調理しているのが、
松任谷由実さんである。


♪時はいつの日にも親切な友達 過ぎて行く昨日を物語に変える
というあまりに有名なフレーズを荒井由実時代に(1974年「12月の雨」)
世の中に残してしまったが(シュガー・ベイブのコーラスとともに)、
あれから30年経って、今また時間のオリジナル料理を密かに完成しつつある。
“未来は、過去の向こうにもある”。


6月は雨の月。と同時に、時の記念日のある月でもある。
時間について折りを見て記していくことにしよう。